Column

病院長コラム

躑躅(ツツジ)

新緑の季節となりました。ツツジや、チューリップ、ネモフィラなどが野原一面に咲き、藤やモクレンが青い空に映えて、色とりどりの景色が春を讃えています。

新型コロナウイルス感染症も、終息はしていないものの、このたびより5類感染症となり、インフルエンザと並んで「(少したちの悪い)風邪の一種」とみなされるようになって、名実ともにウィズコロナの時代に突入することになりました。

今が旬のツツジは、漢字では「躑躅」と書きます。この難解な漢字は二文字ともに足偏で、「躑」がたたずみ、足踏みすること、「躅」は足摺をしてあがく、という意味で、2つ合わせて「行きつ戻りつ足が先に進まない事」を指し、「足が止まるほどに見とれる美しさをもつ花」という意味なのだそうです。ただ、今の私達は、足を止めているわけにはいきません。新型コロナウイルス感染症の蔓延で停まっていた数々の経済活動や本来の人間としての活動を前向きに進めていかねばなりません。そしてそのためにも、コロナから逃れることだけを考える生活ではなく、なによりも体が資本と考え、自分の体全体すべてについて健康に気をつける時でもあるわけです。このコラムで、何度も申し上げていることですが、まだまだ病院から遠ざかっていた方が多いことも事実です。今日もまた、コロナ流行以来のこの3年間、健康診断すらしていなかった人が受診されました。そして蓋を開ければやはり、という結果でした。

コロナウイルスの流行によって、失ってきたものがあまりにも多いと言えます。リモート・ワークが推奨された分、言葉だけは伝わっても、相手の熱気や心意気、誠実さなどまではなかなか伝わってくることはなく、人間同士の真のコミュニケーションに大きな制約がもたらされてきました。私共の世界でもリモート診療という形式がありますが、脈もとれず、聴診器すら当てることができずに、どうして真の診療ができるのだろうか、大きな問題とされてきました。しかし、今回からようやく、本当に心を通わせた人と人の繋がりを考える時が戻ってきたと考えるべきであり、病気の早期発見も当然ですが、より悪い病気にならないように健康を維持しマネージメントする場所として医療機関を積極的に利用していただく時代に戻ったと考えるべきであり、そのことを改めて心に留め置きたいと思っております。

病院もまた人が造り、人との真摯なコミュニケーションをしなければならないところであり、その対応には数々課題があることを承知しておりますが、感染症対策は十分考慮したうえで、少しでも安心して受診でき、そして安心して帰宅していただける病院となるよう、引き続き励んで参りたいと思っております。